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2015年3月24日

富士山ライトアップ計画に対し懸念を表明します

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 国際ダークスカイ協会東京支部は、先日報道された富士山ライトアップ計画*に対し、光害の観点から懸念を表明し、環境や社会に与える影響をさらに検討した上で再考されることを望みます。

 光害(ひかりがい)とは、街灯や商業施設の看板照明等が、不適切な設置・運用方法である際に起こる、さまざまな環境問題・社会問題の総称です。照明は日常生活に不可欠ですが、過剰な明るさや目的外の方向を照らす照明は、安全性の向上には何ら役立ちませんし、貴重なエネルギーの浪費でもあります。また、夜間に強い光を浴びることによる健康被害、まぶしさや侵入光といった生活環境の劣化、夜行性生物や昆虫などの生態系への影響、夜空の方向への光漏れにより星が見えにくくなることなどの影響が、多くの事例や科学的根拠に基づいて実証されています。建築物やモニュメント等の夜間演出の手法である「ライトアップ」も、対象物の文化的価値に基づいた明確な目的や周辺環境との調和を十分に考慮してデザインされたものでなければ、光害となる可能性があります。

 生態系への影響の事例を挙げると、夜行性生物の生活圏消失、昆虫の誘因・生息分布の変化、概日リズムに基づいたさまざまな行動パターンの破壊、などがあります。ホタルやカエルなどは、暗がりでのみ求愛行動を取ります。渡り鳥は、上空へのサーチライトに引き寄せられ光にトラップされてしまいます。これら全てが、生態系のバランスの崩壊に繋がる危険性があります。生物にとって、夜本来の暗闇は非常に重要なものです。我々人間は、自然界への影響ができるだけ小さくなるよう十分配慮した照明を使うことが求められます。

 富士山は、日本の象徴であると同時に世界遺産でもあり、その貴重な自然環境を含め国民共有の財産です。太陽光に照らされた雄大な姿、ほの暗い月光にたたずむ優美な姿は、自然に対する畏敬の念を起こさせます。報道された記事によると、実験計画では富士山から20km離れた地点に設置したLED照明装置を使い、山頂付近をライトアップするとのことです。私たちはこの計画に文化的な価値を見いだせず、自然界にとって大きな損害をもたらすものと考え、危惧の念を抱きます。

 

*) 参考記事:中日新聞(2015年3月18日)『LEDで富士山ライトアップ 20年実現へ』
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20150318/CK2015031802000100.html

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