光害についての出前講座を無料で実施します
光害をテーマとした出前講座を、全国どこでも無料で実施します。実施可能な日程は限られますので、お早目にご相談ください。下記アドレスより、『B06』をお申込みください。
http://www.toyo.ac.jp/site/haken/41659.html
注)星の見え方への影響など、天文に関わる話題はごく一部です。エネルギー・生態系・人体への影響など、幅広くお話しします。
鳥取砂丘「光のタワー」計画に対し懸念を表明します
国際ダークスカイ協会東京支部は、鳥取市が鳥取砂丘で計画している「光のタワー」について、光害の観点から懸念を表明し、周辺の生態系や天体観測などへの影響を十分に検討した上で、抜本的に見直されることを望みます。
夜間の屋外照明は我々の生活に不可欠なものですが、過剰あるいは不適切な設置・運用方法である照明は、光害(ひかりがい)と呼ばれる様々な問題を引き起こします。具体的には、夜行性生物や昆虫・植物などの生態系への影響、人間生活や健康への影響、エネルギーの浪費、天体観測への影響などが挙げられます。
本計画のように、指向性の強い投光器で天頂の1点に向け光を放っても、その1点だけが照らされるわけではありません。遠方からでもその光線がはっきりと目視できるならば、相当量の光が大気中で散乱し、周囲の空間が散乱光で満たされています。雲による反射・散乱があると、光はさらに拡散します。散乱の程度は大気中の微粒子や雲の量で大きく変動し、どの程度の範囲がどの程度の明るさとなるか、定量的に予測を示すことは容易ではありません。しかし、月明かりのみに照らされていた自然本来の暗さが失われ、自然界とは全く異質のLEDの光が相当な広範囲に行き渡ることは、疑う余地がありません。
本計画は、自然豊かな地方で行われるものとしては過去に類を見ないスケールであり、その影響の程度は推測の域を出ません。しかし、科学的根拠や過去の多くの事例より、以下のような影響が生じる可能性が考えられます。
〔例〕鳥や昆虫が光線に引き寄せられ、周囲をグルグルと飛び続ける。夜に鳴き声を挙げる。
光源や光線の周辺に害虫が集まる。
夜行性生物の生活可能圏が縮小する。
ミジンコや魚が移動し、植物プランクトンが増殖し、水中生態系が変化する。
昆虫などの光周性が乱れ、越冬できずに死滅する。
ホウレンソウの育成障害や、樹木の紅葉・落葉遅延が起こる。
概日リズムに基づいた、様々な生物の行動パターンが破壊される。
これら全てが、地域の生態系のバランスの崩壊に繋がる危険性があります。生物にとって、夜本来の暗闇は非常に重要なものです。我々人間は、自然界への影響ができるだけ小さくなるよう十分配慮した照明を使うことが求められます。
これらの影響は、点灯時間を短くしたり、光量を減らすことで、軽減されることは言うまでもありません。しかし、たとえ数分間の点灯でも、影響が完全にゼロになることはありません。
環境省が制定した「光害対策ガイドライン」(平成18年12月改訂版)では、良い照明環境とは『人工光によって造られる光環境のうち、周囲の状況(社会的状況及び自然環境)に基づいた適切な目的の設定と技術により、安全性、効率性、快適性の確保と同時に、景観や周辺環境への配慮が十分なされている環境』と定義されています。そして、屋外照明を計画・設置する際には「照明環境設計者」を置き、計画の初期段階から「屋外照明等設備チェックリスト」に基づく確認作業を実施することが推奨されています。また、『照明設備周辺に生息する保護するべき動植物の有無を調査するとともに、その影響のメカニズムをよく理解し、それぞれ個別に対策を検討すべきである。』と述べられています。屋外で大量の人工光を使用するイベントを、プロポーザル選考で選定するのであれば、その選考段階から環境への影響を念頭に置き、環境および照明の専門家の意見も聞いた上で、決定することが望まれます。
鳥取は、都会では経験できない豊かな自然・美しい星空を持つ地域です。山陰海岸国立公園には、数多くの絶滅危惧種*を含む貴重な生態系や、鳥取砂丘**をはじめとする自然のままの壮観な風景が広がっています。また、鳥取市南部の佐治町では、その誇るべき美しい星空から、光害を防止するための「ソラクライ・プロジェクト」を展開されている、と伺っております。どうか改めて、その素晴らしい自然環境・星空環境を地域の財産と再認識され、本計画が地域の価値を損なわないよう計画の抜本的見直しを実施し、再度光害の防止・啓発に舵を切っていただくことを期待いたします。
*) 鳥取砂丘には動物のみで環境省版レッドリスト掲載種12種、鳥取県版レッドリスト掲載種17種が生息。
**) 鳥取砂丘は環境省特別保護地区であり、そこに生息・生育する動植物へ悪影響を及ぼす行為は許されない。また鳥取砂丘に隣接する多鯰ケ池は,11月から12月にかけて冬鳥として飛来する水鳥類の重要生息地である。
以上、情報提供:鳥取大学地域学部 鶴崎展巨教授
Facebookページはこちら
https://www.facebook.com/ochi.nobuaki/posts/685011994937633
(2015.5.21 13:40追記)
一点、訂正します。提案されているランプは、LEDではなくキセノンランプだそうです。14日に電話で問い合わせた際には、LEDとの返答でしたので、本文にはそのように記載しました。
プレスリリース: テネシー州に新たなダークスカイ・パークを認定
国際ダークスカイ協会は、テネシー州北部のピケット州立公園(Pickett State Park) とポーグクリークキャニオン州立自然区(Pogue Creek Canyon State Natural Area) を合わせて、世界で23番目のダークスカイ・パークに認定しました。ランクは Silver Tier です。
人口の多いミシシッピ川東側の地域では、暗い自然環境は貴重で、その保護はとても重要なことです。カンバーランド高原の端に位置するこの地域では、暗い環境を保護する様々な取り組みが行われています。
詳細は、IDAによるプレスリリース(2015.5.2) をご覧ください。
http://www.darksky.org/assets/Night_Sky_Conservation/Parks/Pickett_Pogue/PickettPogue_IDSP_press_release.pdf
位置: ピケット州立公園
プレスリリース:新たに3つのダークスカイプレイスを認定
【1】
国際ダークスカイ協会は、ユタ州のウィーバー・ノース・フォーク・パーク(Weber County North Fork Park) を世界で21番目のダークスカイ・パークに認定しました。ランクはBronze Tier になります。
ユタ州の大都市からそう遠くないロケーションですが、ウィーバー郡公園、IDAオグデン支部、ウィーバー州立大学、オグデン天文協会などの長年の協力により夜空の暗さが保たれ、認定に至りました。
詳細は、IDAによるプレスリリース(2015.4.13) をご覧ください。
http://www.darksky.org/assets/Night_Sky_Conservation/Parks/North_Fork/NorthForkPark_press_release_FINAL.pdf
位置(Google Map): ウィーバー・ノース・フォーク・パーク
【2】
国際ダークスカイ協会は、ユタ州のキャピトル・リーフ国立公園(Capitol Reef National Park) を世界で22番目のダークスカイ・パークに認定しました。ランクは最高のGold Tier となります。
大都市から離れ、晴天率も高く空気も澄んでおり、素晴らしい夜空が楽しめます。同公園は15年間にわたり、暗い夜空の大切さを啓発する大人向け・子供向けの活動を続けてきました。
詳細は、IDAによるプレスリリース(2015.4.16) をご覧ください。
http://www.darksky.org/assets/Night_Sky_Conservation/Parks/Capitol_Reef/CapitolReef_press_release.pdf
位置(Google Map): キャピトルリーフ国立公園
【3】
国際ダークスカイ協会は、アリゾナ州北部のカイバブパイユート・インディアン居留地(Kaibab Paiute Indian Reservation) を世界で10番目のダークスカイ・コミュニティに認定しました。世界初の”ダークスカイ・ネイション(国家)” と言えるでしょう。
約250人から成るカイバブパイユート族は、アリゾナ州とユタ州の国境付近に住み、部族全体で夜空を守る考えを持ち、屋外照明の改良も行っています。旅行者も巻き込んで “Winsor Castle by Night” “Dark Wings at Pipe Spring” といったさまざまな啓発イベントを開催しています。周囲の他の部族も、ダークスカイコミュニティを目指して動き出しています。
詳細は、IDAによるプレスリリース(2015.4.22) をご覧ください。
http://www.darksky.org/assets/Night_Sky_Conservation/Communities/Kaibab_Paiute/KaibabPaiute_press_release.pdf
位置(Google Map): Kaibab Paiute Tribal Office
【ダークスカイプレイス・プログラムについて】
国際ダークスカイ協会は、夜空を保護する優れた取り組みを称えるために、ダークスカイプレイス・プログラム(International Dark Sky Places: IDSPlaces) を2001年から開始しました。認定には、屋外照明についての厳格な基準と革新的なアウトリーチ活動が求められます。これまでに認定されたIDSPlacesは、ダークスカイ・コミュニティが10ヶ所、ダークスカイ・リザーブが9ヶ所、ダークスカイ・パークが22ヶ所です。
ダークスカイプレイス・プログラムの詳細はこちら
日本語 http://idatokyo.org/?page_id=414#IDSP
英語 http://darksky.org/night-sky-conservation/dark-sky-places
プレスリリース: 4月13~19日は国際ダークスカイ週間
世界天文月間の一環として実施される「国際ダークスカイ週間 (International Dark-Sky Week)」(4月13~19日)では、光害の問題を啓発し、その解決策を広めるための様々な方法を提供します。多くの天文関連イベント、GLOBE at Night、フォトコンテストなど、詳細は下記のサイトをご覧ください。
IDAによるプレスリリース (2015.4.9)
http://www.darksky.org/resources/446
IDAによる詳細のサイト
http://www.darksky.org/int-l-dark-sky-week-main
世界天文月間の日本語による案内(世界一斉天文イベントWG)
https://sites.google.com/site/sekaiisseitenmoneventwg/home
富士山ライトアップ計画に対し懸念を表明します
国際ダークスカイ協会東京支部は、先日報道された富士山ライトアップ計画*に対し、光害の観点から懸念を表明し、環境や社会に与える影響をさらに検討した上で再考されることを望みます。
光害(ひかりがい)とは、街灯や商業施設の看板照明等が、不適切な設置・運用方法である際に起こる、さまざまな環境問題・社会問題の総称です。照明は日常生活に不可欠ですが、過剰な明るさや目的外の方向を照らす照明は、安全性の向上には何ら役立ちませんし、貴重なエネルギーの浪費でもあります。また、夜間に強い光を浴びることによる健康被害、まぶしさや侵入光といった生活環境の劣化、夜行性生物や昆虫などの生態系への影響、夜空の方向への光漏れにより星が見えにくくなることなどの影響が、多くの事例や科学的根拠に基づいて実証されています。建築物やモニュメント等の夜間演出の手法である「ライトアップ」も、対象物の文化的価値に基づいた明確な目的や周辺環境との調和を十分に考慮してデザインされたものでなければ、光害となる可能性があります。
生態系への影響の事例を挙げると、夜行性生物の生活圏消失、昆虫の誘因・生息分布の変化、概日リズムに基づいたさまざまな行動パターンの破壊、などがあります。ホタルやカエルなどは、暗がりでのみ求愛行動を取ります。渡り鳥は、上空へのサーチライトに引き寄せられ光にトラップされてしまいます。これら全てが、生態系のバランスの崩壊に繋がる危険性があります。生物にとって、夜本来の暗闇は非常に重要なものです。我々人間は、自然界への影響ができるだけ小さくなるよう十分配慮した照明を使うことが求められます。
富士山は、日本の象徴であると同時に世界遺産でもあり、その貴重な自然環境を含め国民共有の財産です。太陽光に照らされた雄大な姿、ほの暗い月光にたたずむ優美な姿は、自然に対する畏敬の念を起こさせます。報道された記事によると、実験計画では富士山から20km離れた地点に設置したLED照明装置を使い、山頂付近をライトアップするとのことです。私たちはこの計画に文化的な価値を見いだせず、自然界にとって大きな損害をもたらすものと考え、危惧の念を抱きます。
*) 参考記事:中日新聞(2015年3月18日)『LEDで富士山ライトアップ 20年実現へ』
http://www.chunichi.co.jp/article/shizuoka/20150318/CK2015031802000100.html